学童保育について

GUM15_CL07050学童クラブ・児童館に持ってほしい質と機能

連協は子どもの成長を大事にしてほしいと考えています。
子どもの状態に気づき、受け止めそして心のキャッチボールをしながら育ちを応援している姿はすばらしいものがあります。

ある方の経験でもこんなことがあったそうです。

走り回るなど激しい遊びの好きな息子は、学童が大好きで、学校へは行きたくないという日もありましたが学童を休みたいとは一度も言わない学童大好き少年でした。
夏休みを過ぎたある日のこと、児童館指導員のニカチ(児童館ではほとんど愛称で呼ばれています)から連絡をもらいました。長男と友達の二人がコンビニで万引きしたというのです。とった水鉄砲で遊んでいたようです。あわてて向かいました。
親子で並ばされて、この子達はとんでもないことをしたと怒られました。そして、お母さんにはもう少し話があるからとこどもだけを向こうに行かせたとたん、にこっと笑って「おかあさん、よかったよかった。今頃の年齢には良くあることで、今が大事だよー!」「まわりの人にもしっかりしかってもらおう」と言われました。そして言われたとおりにコンビニに品物を返しに行き、警察署には前もって電話を入れておいて、「またこんなことしたら、牢屋に入れるぞ」とわざわざ留置所を見せて調書まで取ってもらいました、ひらがなも教えてもらいながら。そうしてしかってもらい、もうしませんと泣きながら帰りました。
保育園育ちの1年生ですから、自分で買い物をしたことはほとんどありませんでした。自分のものと他人のものとの区別など社会のルールを最初に効果的に教わりました。さすがプロです。

また親が全くそんなことには気づかないのに万引きを発見することもあるそうです。「よーく見ていると、様子がおかしい→何かポケットに入っている→まあたらしい消しゴム→それなあに、どうしたの・・・・」で白状してくれるのだそうです。
子育てにある程度関われば、子どもたちの表情の変化くらいは分かるようになりますが、おかしいと気づきそれに隠された事実(この場合は万引き)をつかめるプロの質にはとても及びません。
また母親に精神的な病気があり夜起きていて朝起きない生活になり、子どももそれに引きずられ遅刻ばかりしていた子がいました。生活の乱れだけでなく愛情を受けられる状態ではなかったので、学校でも授業中に立って歩く、どなりちらすなどが続いていました。親も含めたケアがなければどうにもできません。

あるベテラン指導員の方は、親の気持ちを受け止めると同時に生活改善のために朝起こしにいくことをはじめました。私たち事情を知っている親たちは、親子を見かけたら話しかけたり、見守ったりを続けました。学校の先生にも働きかけ、交代でおこしに行くようになりました。その結果両方ともいい方向に向かい、元気に学校に通うように変わりました。GUM10_CL01066

病気ではなくても、親子でにつまってしまう例は、かなり増えていると思います。日本の男性の家事育児への関わりの低さもあり、離婚も増え同時に母子家庭も増えています。結局責任は女性に押し付けられている場合が多いです。今こそ女性支援と子ども支援が必要です。
厚生労働省が少子高齢化の予想外の進行に危機感を持って作成した、「子ども子育て応援プラン」のパンフレットの中に、出生率低下の社会的背景が述べられています。
社会的背景の一番に、働き方の見直しに関する取り組みが進んでいない、ことがあげられています。それによれば、子育て期にある30代男性の四人に一人は週60時間以上就業しており、子どもと向き合う時間が奪われています。わが国の男性の家事・育児に費やす時間は世界的に見ても最低の水準であり、その負担は女性に集中しています。育児休業を利用しなかった最大の理由は「職場の雰囲気」であり、育児休業制度が十分に活用されていない現状があります。このような職場優先の風潮、長時間労働環境の見直しが必要とされています。
未就学児を持つ男性の育児・家事時間の比較がのっていますが、いかに日本の男性が家庭に存在していないかが、この資料からもよく分かります。
日あたりの比較ですが、いくつか紹介します。日本の0.8時間に対して、アメリカ2.6時間、イギリス3.1時間、オーストラリア2.9時間となっています。ちなみに私の場合は5.5時間程度が平均時間です。
学校などの授業参観や保護者会などでもほとんど父親の姿はありません。私は子どもの入学式・卒業式などなど主な行事には必ず出席しています。休まなければ出られないものも多いのですが、そのおかげもあって入社以来有休完全消化が続いています。
ただ普通は子どもが病気で休んでも、いまだに「会社と家庭どっちが大事だ」とか、「そんなことしてると机がなくなるぞ」と上司からおどかされるのも現実です。若い父親たちの中には家事育児にかかわろうとする方も増えていますが、50歳ぐらいから上の上司が脅しています。

多くの学校や教師がそうであるように、子どもの問題行動を母親のせいにするのは簡単です。しかし、それでは問題解決にはなりません。両方の応援が必要だとの認識と経験ある指導員が必要です。また少し長い期間継続して支援できる体制が必要です。母親よりも下の人たちではなかなか親支援まではできません。
これまでに民間へ業務委託された館の一部では、人材派遣業的な民間企業の弊害が集中的に出ている例も見られました。一生懸命取り組もうとしている事業者でも、予算が少なく年収200万円程度しか出せないため、1年間でほとんどの指導員がやめてしまう例も少なくありません。経験を積み重ねるところまで行かない現状です。

集団遊びにもプロの技!! 魅せた!!2005年7月新宿での都研集会
都研集会特別分科会 児童館で伝えられている、空き地遊びの伝承=集団遊び
児童館・学童クラブの大切な質として、意外に知られていない、集団遊びがあります。時間延長・祝祭日開館など親へのサービス向上の陰で失われつつある集団遊びを知ってもらおうと、企画されました。
当初はスーチンこと鈴木指導員が、集団遊びを実際に指導し創造している児童館・学童クラブからの参加者を中心に組み立て、当日参加の子どもたちを巻き込んで輪を作ってみようと考えていました。しかし、地域の行事などが重なり全く来られなくなったので、全て当日参加の子どもたちでやってみる、文字通りぶっつけ本番でした。
期待しつつもやや不安を感じつつ参加しましたが、あっという間に子どもたちを引きつけ集団遊びに入り込んでいくプロの技に魅せられました。
導入部の鬼ごっこに始まり、次のステップへ進んで行きます。第3ステップとして登場したのは、狐と狩人と殿様の3つに役割が分かれた遊びでした。ドーンじゃんけんポンの要領でぶつかり、勝ち負け引き分けがあります。最後は殿様が倒されたら負けですが。いかに殿様を効率よく倒すように攻撃をしかけるかなど戦術を話し合いながらやる、かなり高度なゲームです。
当日集まった子どもたちでは年齢や経験の点で4ステップ目のSケンには進めませんでした。しかし、へとへとになりながらも次のステップに進むにつれて、子どもたちの目が輝き、そして2つの集団が闘うグループとして組織されていくのがよく分かりました。
頭を使い、そして仲間と話し合い進んでいく集団遊び、その中で子どもたちの成長がかちとれる事が事実なのだと実感されられました。どこかでぜひまた多くの方に見てもらいたいと思います。GUM15_CL07021

地域社会の再構築の中で核となる児童館と行政の役割
子どもたちを大事にできる大人がいて、気持ちもつかめるアンテナとしての機能も持つ児童館の役割が今大事
全国で今公設公営の学童クラブを廃止し、全児童対策の放課後の居場所作り事業に投げ込んでしまう例が激増しています。遊び相手なのだからと、賃金が安くて若い人を中心にすえる政策がとられるところがほとんどです。子どもたちの環境を大事に作るべき時に逆に進んでいる気がします。
今までそのような施設が全くなかったところでは、喜ばれているところもあると思います。しかし、例えば東京のように美濃部都政の時代に保育園だけでなく児童館・学童クラブも公設公営で整備されてきたところから見ると、かなり低い水準への平準化が進んでいると言わざるを得ません。
極端な一例のある市では、平成15年から学童クラブは一度に全廃されました。おやつもなくなり、若い2人くらいのプレイリーダーが100人以上を見ているという例が一般的になりつつあります。けんかやけがが急増しました。
おやつがなくなることは、低学年の子達にとってはおなかをすかせたままがまんしろということです。特に1年生などは一度に食べられる量は少ないので、給食を残しているのに3時ごろにはおなかがぺこぺこになる場合が多いのです。ですからおやつは補食として大きい役割を果たします。食いだめのきく大人とは違うのです。
学童事業が一般の子達も来る校庭開放事業に併合されたある区では、おやつが一般児の帰った後の17時30分以後にされたため、「おなかがすいたら水を飲め」が、子どもたちの間で合言葉のようになっていると聞きます。
場所さえあればいいだろうといわんばかりの、そんな施設では目が行き届かないため、一人一人のケアなどとても無理ですし、共働きの親が安心して預けられる環境ではありません。子どもたちの心の叫びをつかむアンテナ機能などはとても無理です。
新宿区の児童館では必ずと言っていいほど、問題をかかえた中高生が、自分の居場所を求めてきて、大人である指導員や小さい子たちとのふれあいの中でいやされ、育ちなおしている姿が見られます。
こんな時代だからこそそんなことも支援している児童館の機能が再評価されなければならないのに、全く違うものに投げ込み壊しています。地域の子育て力を育てるといいつつ、今までの経験を受け継ぐことすらしていません。

行政としての役割を果たすことが大事
安上がりの政策が横行する中で、本来自治体などの公的機関がすべきことを丸投げしていく例が増えています。新宿区でも連協からの質が低下するのではとの疑問に、民間委託してもきちんとチェックしていきますから大丈夫との答えが返ってきます。しかし、誰がどのような視点でチェックしていくのかははっきりしません。たとえば児童館事業の経験や蓄積が子どもたちの育ちの支援にどうつながっているかが分かる人が少ないです。
本庁などの担当者は異動ばかりで継続性がないため、経験者が育っていないことにも大きな原因があると思います。担当が定期異動を繰り返していては、プロが育ちません。異動しつつ昇格して行くやり方を見直すべきです。本気で息の長い行政に取り組めるプロ養成のための体制づくりも必要だと思います。そうでなければ次世代育成、子育て支援など息の長い取り組みが必要なものは無理です。
新宿区の指導員の方たちと取り組んでいきたい課題です。

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少し質についてまとめます。

①子どもたちが安心して通える環境は、職員が安定して勤めていることが大事。指導員が入れ替わり立ち代りすることは、子どもたちが安定しなくなることにつながります。
小学校の先生を児童館と同じような形で民間委託したらどうでしょう、考えただけで分かります。

②子ども支援と同時に親支援が必要な時代です。若い人からベテランまでバランスのいい指導員配置が必要です。

③子どもたちの心の痛みが分かる人が必要です。
結局は人材です。さびしそうにしている子どもに近づき、痛みを理解し受け止めてあげて、子どもたちの社会に戻してあげるには、まず心の痛みが分かることが大事です。出しているサインに気づくことと表の言葉だけではない事実をつかんでいけることが大事です。
これは公設公営の指導員にも求められていることです。失礼ながら必要なレベルに達していない方もいます。

④いろんな子の居場所になるためには、遊びや手芸工作なども含めた幅広い運営ができる人材育成と配置が必要です。たとえば集団遊びができない方ばかりが配置されることのないように、指導員のスキルまでつかんだ配置をしてほしいです。