連協の取組みとこれからの課題

連協として取り組んできたこと、そしてこれからの課題

●新宿区学童保育連絡協議会(新宿連協)とは

新宿区にある22の 学童クラブのうち、昨年度加盟の北山伏学童クラブを加えると18の父母会(2父母会が休会状態)とそのOB、個人が連協に加盟しています。また、東京都 23区の学童クラブ父母会の協議会が加盟している、東京都学童保育連絡協議会にも新宿区連協として加盟しています。
運営委員会では、各父母会が 抱える問題を話し合ったり、要望書を提出し、福祉部子ども家庭課(この4月から児童→こども)と話し合いの場を持っています。学童クラブにとって指導員と 父母の信頼関係を確立することが重要な課題であり、毎年12月に指導員と懇談会を行い意志の疎通を図っています。
また、毎年11月3日(今年度は10月30日)には恒例の大運動会を開催し、交流しています。

●学童児・子どもたちが、安心して通える学童クラブ、安全な地域社会を求めます

「通学路などで変な男に手をつかまれそうになった」などの情報が毎週のように伝えられる事態になっています。この間の運営委員会等でも報告され話し合われ てきましたが、子どもたちの生命や安全が日常的に脅かされては安心して子育てなどできません。子どもたちが毎日安心して通え、すごせる学童保育にするよう 要望していくとともに、積極的に働きかけていきます。

今年3月に提出した要望書(資料として掲載)に詳しく述べられていますが、登館途 中の安全についての感じ方について、児童の出欠を確実に把握するノウハウが欠けている館がある、ということもあるかもしれません。しかし保護者からの問い 合わせに対し、指導員にそれほどの重大性の認識も危機感も感じられないケースもありました。
保護者が子どもに伝えたいことがあって児童館へ連絡 したところ、「今日は来ていません」と平気で言われた。児童館から子どもが来ないと連絡があったので「探しに行って下さい」とお願いすると「今は人手がな いので…」と言われた。こどもが2日間もサボって行かなかったのに、学童クラブからは全く連絡がなかった、などの事例がありました。

学童クラブを利用する保護者の第一の心配は、子どもの安全です。保護者は、子どもが学童クラブで信頼できる大人の保護下にいる、ということで安心していら れるのです。昨今の情勢を考えると、子どもが登館しないのは、いつも寄り道やさぼりで遅れているのだと考えるわけには行きません。寄り道かと思ったら、実 際には事件に巻き込まれていた、ということであっては決してならないのです。

学童クラブ児の出欠を確実に把握できないことが常態化して いる、あるいは、指導員が児童が登館しないことに問題意識・危機意識が低い、ということでは保護者が安心できないことは言うまでもありません。この点に関 しては、連協の要望に基づき各館で出欠チェックの厳正化が行われ改善されているようです。

また安全は地域社会全体で守っていくことも必 要です。そのための学校の姿勢は非常に大事です。全体として以前よりは放課後の子ども達に気を配る学校が増えていますが、まだまだ不十分です。各父母会か らも学童児への下校後への気配りを働きかけ連携を一層図って行くことも必要です。

●大切にしたい学童クラブ・児童館の質 −子どもの立場に立つ指導

・民間業務委託の提案と連協としての対応

新宿区が2003年9月に発表した「後期基本計画」や「行財政改革計画」で、①学校に併設、②児童センターとこども館に機能分担、③業務委託の導入を内容とする「児童館の再編」が打ち出されました。私たちは、意見を集約し、様々な形で要望等を区に伝えてきました。

業務委託については不安が解消されていないので、十分な検討を求め陳情も提出しました。それは行政からの説明には、子どもたちにとって豊かな放課後を確保 するために、今まで培ってきた区の経験や指導要領等を、いかに評価し、活用していくかの検討がないことが、最大の問題と考えてきたからです。

連協としては、提案された時から、親たちへのサービス拡大のみ強調する区の姿勢に疑問を感じました。連協の役員を中心に参加したプレゼンテーションでの内 容は、不安も感じるものでした。日曜祭日も、19時までと長時間預かること、楽しく遊ぶことだけを前面に打ち出しているもの、選択すれば別の多様な教育プ ログラムが受けられることを売りにしているところも多く、教育系の会社が学童クラブの事業にも参入しようとしている感じが強く受け取れる内容が多かったの です。

その中でもよりましなワーカーズコープが早稲田南と榎町で委託業者として選ばれたのは、参加した区民のアンケートによって圧倒的な支持を受けたことによる大逆転勝利とでも呼ぶべきものでした。
8社しか来ませんでしたから選択肢は狭いのですが、次に選ぶとしたらと感じられた日本デイケアセンターに西新宿は委託されることになりました。

ワーカーズコープは、これまでも板橋などで実績があり、子どもたちの生活の場としての学童クラブを大切にし、一人一人の子どもたちの成長をどう支援するか という姿勢が感じられました。私たち親としては当たり前と思われることをきちんとしているだけですが、そのワーカーズコープは区だけの審査で決めていたら 絶対に選ばれないほど点数が低かったのです。どういう基準で選んでいるのかの問題点をそこに見る気がしました。

子どもたちに必要なもの を提供する姿勢が評価の大きなポイントにはなっていませんでした。連協としては親に対するサービス拡大ばかりでなく、子ども達の生活の場ですし成長の場を 守るように要請してきました。その観点から、民間業務委託についての陳情書を提出し、与党議員からも「質を落とさないように進めるのは行政の責任だ」との 発言がありました。

きちんとした民間学童クラブを運営している雲柱社というところがあります。新宿の委託に来なかった理由として一部業務委託であることと同時に、人材は簡単に育たないので、急にあちこちの事業を受けるのは難しいとの理由だと聞いています。

・民間業務委託の話し合いからつかめてきた指導員の質−心をつかむ力

1年前の2004年4月から、早稲田南・榎町・西新宿で民間業務委託が始まりました。その後も連協として議論を続けてきましたが、質について一定の整理をしたのが今年の4月に発行したパンフレット「児童館・学童クラブは子育て支援最前線」によってです。
これは具体的な指導員たちが子どもたちへの支援をどのように行っているかを事例として紹介したものです。そこで大事なのは子ども達の表面に現れる態度や言 動の奥に表れる気持ちをつかみながら、応援していける感性を経験の中でつかんでいることなのです。それが私たち連協として大事にしたい学童クラブ・児童館 の質といえるものだと整理できつつあります。ただの説教ととられるのでなく、子どもたちに聞き入れてもらえるようにできるコミュニケーション能力とも言え ると思います。

「子どもにとって豊かな放課後をどのように確保するか」という視点を連協としては言い続けてきた内容に当たるものだと考えます。
結局のところ、質の評価についての基準を区が持っていないため、児童館の職員をどのように育てていくのかがおろそかになっていると思います。そのため職員 の中でもレベルの差が見られます。運営委員会でもかなり議論になりましたが、民間委託館の西新宿学童クラブではこの冬休み期間中、こんなことが起きまし た。

冬休み中のある土曜日、学童児Aくんがお弁当を持って学童クラブへ行ったところ、指導員が「今日は学童クラブの利用は誰もいないは ずだよ」とAくんへ言いました。Aくんの保護者は事前に冬休みの出席予定を提出していたのですが、指導員の記載ミスでその日は出席なしとされていたので す。
指導員にそう言われたAくんは、それならば一般として遊べると考ました。Aくんはそのまま家へ戻り、お弁当をおいて、カードゲームなどを持ってこども館に戻り、その日は一日中、お昼ごはんも食べずに一般として遊んだそうです。
家に帰ってこどもとの会話に変なところを感じた保護者が問いただしたところ、このような事実が分かり、保護者はこども館へ連絡しました。その日のうちに、申し送りでミスをした指導員から電話があり、ミスがあったことを認め、この件について保護者に謝罪しました。

西新宿学童クラブのA君のケースで議論になったのは、「今日は学童クラブはないよ」と言われたときのA君の心の動きを、指導員が何故察してあげることができなかったのか、ということです。
また、土曜日に通常A君は登館しています。経験のある指導員だったら、その事情を知っていれば「何か変だな」と感じて、「今日はお母さんか誰かおうちにい るの」などの声かけをし、臨機応変に学童クラブとしての受け入れをしてくれたのではないでしょうか。A君は一日中こども館にいたわけですから、それはいつ 言ってもよかったわけです。

子どもはうきちんと説明する能力がない場合もあります、だからこそ指導員は言葉にならない子どもの心を察知し、硬軟使い分けて対応する能力が必要だと考えます。連協として強調してきた遊び相手だけではない人材が必要なのです。

・学童クラブ・児童館での遊び、特に集団遊びの大切さ

学童クラブ・児童館での遊び、特に集団遊びの大切さについてはまだまだ知られていませんが、子どもたちの成長には欠かせないものだと考えます。集団遊びは社会性も育てます。その中でぶつかり合いながらお互いの距離のとり方や協力の仕方まで学んでいきます。
今年度連協で話し合いたい課題の一つでもありますが、長年集団遊びを実践されてきた新宿区のベテラン指導員が、7月3日(日)に戸山高校で開催される都連 協の研究集会の特別分科会で見せてくれます。 当日来てくれた子どもたちや保護者たちと一緒に遊びますので、そちらにもぜひ来てください。

・定員オーバー館の急増は放置できないところまできている

今年4月の在籍数(資料として掲載)を見てもらえば分かりますが、定員オーバー館が急増しています。昨年の9館→12館へ増え、ついにトータルの定員 905をオーバーする922までになっています。特に高一は100人をこえる状態で一つの学童クラブのままでは無理な状態にあります。

この4月から富久小内に一つ公設民営の学童クラブが増えました。富久が定員オーバーでなくなったのはその影響だと思います。さらに高一への対策だとして 2月末に急にプレゼンによって、民間(フロンティアキッズ)へ丸投げの学童クラブを作りました。あんな形で12人しか行かないような高い保育料の施設では 解決できません。高一の近くには、戸塚出張所の跡地の再利用、戸塚公設市場の跡地再利用など、区が所有していて転用できる可能性のある土地はあるのです。

高一の父母会の意見も大事にしながらですが、増館運動も必要だと考えます。学童児が減ることはないと思われるので、さらにオーバー館は増えていきます。今後も増えていくと思われる状態にきちんと対応してもらうよう要請していくことが大事です。
例年7月に行っている福祉部との懇談会は、9月初旬に延期しました。要望の中に増館も入れたいと考えます。定員オーバー館での子ども達の生活や遊びがどうなっているか、教えてください。

●連協運営改善の取り組みと今後の課題

①連協総会の時間を11時からとし、午後の交流の時間を多く取れるようにしました。多くの方から発言いただけるようになり、少し連協が身近になったとの意見もあります。他方で時間が長いと感じられる方もいますので、活発な発言をお願いします。

② お互いの児童館を知ろうと、開催場所を持ち回りで行うようしてきました。西新宿・薬王寺・高二・信濃町・北山伏・上落合・中落合・百人町ではすでに開催し ています。「広いねえ」「きれいだねえ」「ここはちょっと危険だね」など他の館を見ることで色々な感想が出されています。次年度も7月9日の西落合は初め ての開催です。今度はどこでやるか積極的に受けて手配してみてください。

③参加しやすいように、会議での託児を始めました。みなさんの会費などから支出しています。保育専門学校の生徒さんを中心に来てもらっています。来やすくなったとの声も聞かれますがご意見ください。

④これまでのはがき郵送による連絡体制から、メーリングリストでの連絡へ変えました。規約やお知らせなどの参考資料の交換に役立っています。

⑤ 子どもたちの生活を知ってみようと、各館からおやつの献立表を持ち寄り比較しました。ある館から、「おやつの内容について館にお願いしたいことがあるので すが、他の館ではどうなっているか知りたいと」の発言が運営委員会でありました。翌月持ちより比較しましたが、館によってかなりの違いがあり、驚きまし た。比べて職員にお願いなどしていくことで質も守れると思います。この調査などは次年度も続けたいと思います。
連協総会にも各館から5月分か6月分の献立表をコピーして持ち寄ってもらっています。いかがでしょうか、ご意見をお願いします。

⑥運動会の運営について、昨年は同じ日の区レクに譲る形で繰り上げました。小P連からは感謝されましたが、こちらは雨に降られ、バザーしかできず悔しい思いもしました。
運動会は大変貴重な交流の場です。3年間で学童が終わりの方も多いと思います。父母会もそうですが、経験を伝えていくことが大変です。準備などの具体的なノウハウは長年かかわってくれているOB会の力によるところが大きいです。
今年は東戸山小に会場を戻し、昨年の反省から雨のときにもゲームなどできるように、体育館も押さえてあります。
父母会の役割はますます重要です、連協は父母会が元気にがんばれるよう応援します
21世紀の社会を担うのは現在の子どもたちです。輝かしい未来にするのか、又は暗いものにしてしまうのか、その環境づくりは大人の役割です。物質的には豊 かになったにも関わらず、学級崩壊、家庭崩壊、不登校が社会問題化し、ここ最近でも少年による凶悪犯罪が相次いでいます。こうしたことは、子どもたちの夢 を奪い、私たちに厳しい現実を突きつけています。
少子高齢化が一段と進んでいます。こどもを持って苦労するより、現在の生活を充実させたいという価値観の台頭が指摘されています。子どもを育てることに「夢」を持てるような環境整備が欠かせません。
子どもたちが地域でたくましく、幸せに成長するために、私たちになにができるのでしょうか。同じ悩み、共通の立場の親同士が助け合うことが必要です。それを果たせるのが父母会であり、父母会にはそうした役割が求められています。

・父母会が元気に活動できるように努力する課題

運営委員会で、「せっかくみんなでいい話し合いをしているのだから、次の月の方が参加する前に前月の様子が分かるようにしてほしい」、「連協とは何かとい うことを知らない方も多いので、伝わるようPRしてほしい」 など出されました。議事録などをきちんと作り伝えていく態勢をとるようにします。

・連協ニュース「新宿の学童保育」の発行に努力します。

各父母会との相互交流や連携が進むよう努力していきます。そのため連協役員が、各父母会の運営委員会によんでもらい、参加し・交流を図ります。
父母会活動が活発化するよう努力します。今年はキャンプなどの具体的な活動の交流も重視していきます。今までキャンプがなかった北山伏も他の父母会に刺激され、9月初旬に初キャンプをしてみようと考えているとの話を聞きました。

連協役員は、父母・保護者が安心して働き続けられるために、忙しい毎日ではありますが、少しずつ力を出し合ってがんばっていきます。連協にみなさんの力を集めてください。